搬送からお葬式の実務がスタート

病院で亡くなった場合、遺体を自宅などへ移すという搬送の実務がお葬式の出発点になります。
ここで対処があいまいになると、お葬式の方向性が違ってしまうことがあるので要注意。
しかし、亡くなって間もないこの時期は、判断力がもっとも低下しています。
あらかじめ、搬送の方法と安置先、起こりうるトラブルについて知っておくといいでしょう。

遺体搬送車

病院紹介の葬儀社に依頼する

病院と提携している葬儀社に依頼するなら、「病院から自宅までの搬送」と内容を限定して頼みます。
なぜなら、病院紹介の葬儀社でも良心的とは限らないし、搬送をきっかけにして、お葬式を請け負おうとする業者も多いからです。
搬送を頼んだからといって、お葬式全体を任せる必要はありません。
こちらが動揺しているところに、たたみかけるように葬儀の日取りや準備について聞いてくるような葬儀社には注意が必要です。
遺体の搬送がすんだら、精算をしてお葬式の見積もりをもらい、葬儀社には帰ってもらいます。
ほかの葬儀社にも問い合わせをして、納得したところに依頼するようにしましょう。

寝台自動車会社に依頼する

葬儀社が遺体を搬送する場合も、その多くは寝台自動車会社に依頼しています。
寝台自動車会社には、個人でも頼める会社があるので、病院に問い合わせてみましょう。
寝台自動車会社の遺体移送の料金体系は、今のところ明確になっていません。
走行距離や所要時間、搬送した時間帯や道路状況などによって料金が決まります。
しかし、一移送先の道路がわかりにくかったとか、階段で運んだなどの手間が料金に加味されることもあるようです。
長距離の場合は、あとで驚くほど高額な請求を受けることもあるので、電話で依頼するときに、おおよその値段を聞いておくようにしましょう。

寝台車

自分で運ぶ

病院からの遺体の搬送については、特別な車両は必要ありません。
ワンボックスカーやライトバンなど、遺体を横たえたまま運べる車なら、自分で運んでもかまいません。
荷台に布団や毛布を敷いて遺体をくるむようにし、身近な人が付き添ってくればいいのです。
ただし、なぜ、遺体を運んでいるのか説明できるように、病院で死亡診断書は必ずもらってくるようにしましょう。

病院では納棺しない

搬送だけを頼むと「この病院では納棺しないと運べないことになっている」などという葬儀社がありますが、そんなことはありません。
これは、少しでも自社の利益をあげるために、棺を売ろうとしているのです。
病院で納棺してしま、っと、マンションなどのエレベーターで、棺を水平に保ったまま搬入できないことがあります。
やっと運び入れても、棺はぶつけられて傷だらけに。
また、請求されて初めて、棺が非常に高価なものだったとわかることもあります。
担架で遺体を運べば、このような問題はありません。
納摘は死者に対する大切な儀礼でもあるので、安易に行わないようにしましょう。

納棺までの安置方法

遺体は、頭を北に向ける「北枕」にして布団に寝かせます。
北枕ができないときは西枕にします。
布団は薄いもので、シーツは新品か清潔な純白のものを。
掛け布団は上下を逆にかけます。
故人の手は胸元で組ませ、そばに数珠を置き、顔には白布をかけます。
枕元には「枕飾り」をします。
白木か白布をかけた「枕机」に香炉と燭台、花立てを置いて、線香とろうそくを絶やさないようにし、花立てには梧や菊、白百合などを1枝供えます。
これらは葬儀社が用意してくれます。
その他のしきたりや作法は、宗派や地域によっても違うので、僧侶や葬儀社の指示に従えばいいでしょう。

自宅以外の場所に搬送

最近は、通夜やお葬式をする斎場に、遺体を直接搬送する場合が多くあります。
斎場によって搬送方法やその後の対応が変わります。

●葬儀社の斎場お葬式も必然的にここで行うことになります。
つまり、搬送先・安置先として斎場を選ぶと、自動的に葬儀社が決まることに。
この場合、建物の外観や利便性で斎場を選んでいるわけで、もっとも大切なお葬式の内容や進め方で葬儀社を決めているのではないことに注意してください。

●公営・公共的な斎場専用斎場から、公民館、団地などの集会場なども含みます。
集会場などの場合は、遺体の搬送のみを葬儀社に依頼することができます。

公共の施設なので、病院で納棺してから搬送するのが一般的です。

●寺院や民間の貨し斎場この場合も、搬送のみを葬儀社に依頼することができます。
ただし、菩提寺の場合は、葬儀社を指定されたり、あるいは、料理屋のみを指定されたりすることがあります。

一時的に遺体を預かってもらう

年末年始などすぐにお葬式を出せない時期や、自宅に遺体を安置しておけない場合に、火葬場併設の霊安室か、保管場所のある斎場に、一時的に遺体を保管してもらうことがあります。
一般的に納棺した状態で搬送、安置します。

遺体安置

通常の病死でない場合

●自宅で死亡していた場合

朝、布団の中で冷たくなっていたとか、一人暮らしの親のところへ様子を見に行ってみたら亡くなっていたというような場合は、まずかかりつけの医師に来てもらいます。
かかりつけの医師がいない場合は、警察に連絡をします。
いずれにしても、医師が死亡を確認するまでは、遺体を動かすことはできません。
また、生前に診療行為のなかった医師はI死亡診断書Jを書くことはできないので、元気でもかかりつけの医師をつくっておいたほうがいいでしょう。

 

●海外で死亡した場合

現地の日本大使館または領事館に連絡をします。
遺体で運ぶなら、必要な書類を整えて荷物扱いで空輸。
必要書類は、①故人のパスポート、②現地発行の死亡証明書または死体検案書、③日本大使館または領事館の発行する証明書、④工ンパーミンク証明書ですが、その固によって遣うこともあリます。
原則として工ンパミングは必要です。
火葬して遺骨を持ち帰るなら、「死亡証明書Jと「火葬証明書jを発行してもらい、帰国後3か月以内に死亡屈を提出します。

 

●変死の場合

自殺、事故死、火災による焼死、他殺などの変死は、警察による「検視]や警察医によるI検死jが行われ、死亡の原因が確認されます。
検死の結果、必要とあれば「行政解剖Jや「司法解剖Jが行われます。
警察医が死亡の事実や原因を記したものが「死体検案書jです。
遺族はこれとともに死亡届を提出します。
変死となると、警察から遺体が戻ってくるのに、両日はかかり、それまで、通夜やお葬式の日程を決めることはできません。

 

●伝染病の場合

指定された伝染病、たとえば重症急性呼阪器症候群(SARS)、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス、ジフテリア、腸管出血性大腸菌感染症などにかかって死亡した場合は、市区町村長か検疫委員、予防委員の許可がないと勝手に遺体を動かすわけにはいきません。
許可が出たら、火葬にして遺骨を持ち帰り、あらためてお葬式を行います。
この場合は、死後24時間たたなくても火葬にすることができます。