空っぽな気持ちが満たされる場所。
そこがあなたの大切な場所です。
故に、尊もしくは卑、虚しく往きて実ちて帰る。
『性霊集 第二』
だから、
上流の人も庶民も(阿闇梨のところへは)むなしい気持ちで出かけても、
充実して帰ってくることができたのです。
「虚往実帰」(虚しく往きて、実ちて帰る)。
人生の中で、
何度も使える言葉ではありませんが、
今の言葉で書けば
「虚しく行き、満ちて帰る」。
おぼえておきたい言葉です。
出かける時には何もなかったのに、
帰る時にはたくさん得るものがあった時、
たとえばバーゲンに行って両手一杯に買い物をしたとか、
空腹でレストランに入って、
満腹で帰ってきた時にも使える言葉です。
しかし、
空海は、
この言葉を亡き師僧を讃えるためと、
自分が中国から帰国した時くらいにしか使っていません。
買い物とか食事というレベルではもったいなくて使えない言葉です。
私は、
心の充実感を得た時に使おうと大切にとってあります。
学校を卒業する時、
会社を退社する時、
離婚する時、
そして、
死ぬ時……。
何もわからないで、
ある環境に入ったのに、
出る時には心が満たされていた。
深い感慨を胸に
「虚しく行き、満ちて帰る」
と言える人生を歩もうではありませんか。